最高裁判所第一小法廷 昭和51年(オ)291号 判決
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
上告代理人家近正直、同鷹取重信、同出島侑章、同山崎武徳、同桑原豊の上告理由(一)の(1)、(2)、(4)及び(二)について
所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。それゆえ、論旨は採用することができない。
同(一)の(3)の(ニ)について
双務契約の当事者の一方が、相手方の債務と同時履行の関係にある自らの反対給付の提供をすることなしに、相手方の履行遅滞を理由としてした契約解除は、相手方の履行遅滞があれば催告を要することなく契約を解除しうる旨の特約がある場合においても、その効力を生じないものと解するのが相当である。これと結論において同旨の原審の判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。それゆえ、論旨は採用することができない。
同(一)の(3)の(イ)ないし(ハ)について
原審の適法に確定した事実関係のもとにおいては、本件土地の売主木村勘次郎の相続人たる木村ミサエ及び上告人木村一誠が、右残代金債務と同時履行の関係にある自らの所有権移転登記義務の履行の提供をすることなしに、行つた本件土地売買契約の解除は効力を生じないとした原審の認定判断は正当であり、原判決に所論の違法はない。それゆえ、論旨は採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 下田武三 裁判官 岸 盛一 裁判官 岸上康夫 裁判官 団藤重光)